たかがチェンソーと侮ることなかれ⑰ートグワ(植林編その2)

(その1では[苗木の運搬][植え付け手順]をご紹介)
植林は、いつも別行動の各チーム(班)が、一か所に集結する数少ない機会。
今回は4チーム(16人)の合同作業。
4人のチームリーダーが、作業の進捗と今後について打ち合わせしています。
この[段取り]が今回のテーマです。

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植林は時間との勝負


苗木は裸苗で運ばれてくるため、乾燥を防ぐ処置はしてあるとはいえ、ほっとけば枯れてしまいます。
今回のサンプル植林地では、

3町歩に15,000本、ひとり150本/日で100人工計算なので、4チーム16人で計算すると6日ちょっとかかることに。
なので、苗屋さんには2回(7,500本×2回)に分けて苗木を運んでもらいます。
人数は多いほど時間的には有利なのですが、段取りする側にとっては別の問題が・・・。
これが最も(>_<)

いよいよ植林スタート!


サンプル現場の場合、計算上苗木の間隔は横1,4m、縦1,4+α(水平距離と斜距離の関係)でキッチリ収まる。
そこから植林に不向きな岩場などを除外してアバウトに再計算。
この3町歩に対して、1,4m間隔で苗木が余るのか足りないのかを予想します。
(尾根/くぼ地でヒノキ苗/スギ苗の植え分けもある)
しかしベテラン班長の大山さん、
「最初1/3は計算通りの間隔で行った方がええよ」と若手班長にアドバイス。

そして16人横並びで植林スタート、幅が250mあるためひとり15mほど(苗木約10本分)植えながら段を刻んで下りていきます。
植え方には、いろいろな「型」があります。
その型とお隣さんとのラインが乱れないよう上下左右を意識します。
「切り株」「ヅミ」「歩道」「岩」などがあるため、キッチリ等間隔とはいきませんが、この後の「下刈り作業」をイメージしながら植えていきます。
(「型」を無視してランダムに植えると下刈りで苦労する)
しかし、超林業人たちなら最終的な山の姿までイメージで来ているのでは!

杉山さんもみんなに遅れないよう“必死のパッチ”でトグワを振り下ろす!
桧山さんは、自分だけちっとも苗木が減ってかないことに大焦り・・・。
すると・・・、
隣の栗山班長が、桧山さんの苗木袋からごっぞり苗を抜き取って「焦らんでええ」と。

前に「ひとり150本ノルマ」と言いましたが、それは「本数把握」のためであって、お互い助け合いながら作業しますのでご安心を!

ぴったり収めるのは・・・難しい


1/3入れ終わり、等高線図で進捗を確認。
大山班長は経験と勘から残りを判断、森さんたちは「高度計付き時計」や「マップメーター」などを使いながら確認します。

(マップメーターが行方不明)
天候が大きく変化しない限り、かなり正確な高度計測!(^^)!
(相対的な高度が分かればよいので、実際の高度は気にしない)

全体の1/2を超えたあたりから、半日(150本)or苗木袋1パック(75本)ごとに目標を設定します。
「あの岩まで」とか、「下の横道まで」とか。

調整は主に上下間隔を詰めるor広げる、で行いますが・・・、

人数が多いため微調整が難しい。
大勢いれば受け取り方も様々。

段取りの難しさは、植林地の“形”にもよります。
サンプルの長方形は簡単そうに見えて・・・、実は難しい。
底辺が長い(2分割しても125m)地形は、余るにしても足りないにしても大量!というケースが多いのです。
余れば間植えし、足りなければ混んだところから抜いてくるしかありません(>_<)
個人的には「ハート型」「クマ型」などなどいろいろ経験。

独立して調整がきかないところからつぶしていき、合わせやすところを最後に取っておくのが無難かな。

植林スタイルにも変化が!


運搬ドローン

これはすでに実現!

とりあえず植林コスト削減というより、労力削減ということで導入を期待!
遠い昔、奥山(徒歩で1時間以上)の植林で、苗木をヘリコプター運搬。
一度に大量の苗木を運んだことと+ヘリ代を多少でもペイするため、植栽ノルマが50本アップ!
往復3時間+50本増はキツイ(>_<)

コンテナ苗

ちょっと前にここでも登場のコンテナ苗。
たかが工具と侮ることなかれ①ーバッテリー工具

穴掘りの機械化も可能なコンテナ苗(トグワがお払い箱に!?)
根鉢付きで活着率が良いだけでなく、真夏や真冬(土が凍結)の時期を除けばいつでも植えられるらしい。
植林は「春の風物詩」ではなくなる?
(秋植えの地域もありますが)

春植えの場合、年度末で忙しく植林の前準備(地拵え・歩道開設・鹿除けネット)が外注頼み。
再造林の成否を左右する重要な作業なのに・・・、やはり自前でやるのが望ましい。
植林初日にネットの内側でシカやカモシカが走り回っていることも。
(施工ミスでネットの高さが足りなかったりなど)
彼らを追い出すのは至難の業(>_<)
ドローン編隊なら出入口へ上手く誘導できるかも!
ドローンならネットの点検も楽!

とにかく植林時期に縛りがなくなれば、無駄を省ける気がする。

デジタル画像解析

現地調査しなくても画像解析で何でもわかる時代に。
AIとかで、最適な植林パターンをはじき出せる時代になるかも。
(技術的にはもう実現できる気がする)
みんなで「あーだこーだ」言いながら、賑やかに植林するのも決して悪くないんですがねぇ~。

機械やDXによる省力化は大歓迎!!
ただ、昔ながらの“道具”や“技(知恵)”が廃れてしまうのはちょっと残念。
(急峻な地形が多いため、トグワはなくならないとは思うが・・・)

トグワ[植林編]はここまで、次回は[焚火編]です。

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投稿者: natsukopapa2017

動物と昭和と軽キャン好きのイラストレーターです。 林業(フォレストマネージャー)をしていたためその関係のお仕事が中心です。