これまでも何度も取り上げた、原付バイクを巡るママと若者(ヤンキー)の戦い。
その最終決戦となったのが、1993年(平成5年)登場の6代目タクトだったのではなか・・・、個人的にはそう思っています。
決戦の舞台は、リアキャリア?
ライフアップ・タクト
5代目タクトの「スタンドアップ」にかけてか?、6代目のキャチコピーは・・・、
「ライフアップ・タクト」
(当時のカタログより-以下同様)
これまで性能や機能性をキャッチに含めていた流れからは外れるものです。
“スーパー”とか“メットイン”とか。
機能性や装備では、先代のスタンドアップが頂点ということでしょう。
今回は、様々なライフスタイルに対応すべくラインナップを増やしたようです。
以上の3タイプ。
共通して採用された攻めの装備が、リアグリップ一体型樹脂キャリア。
自力スタンドアップを補助するリアグリップ装備でしょうが、何よりこだわったのはスタイリングとの一体感だったのではないかと。
どんなにスタイルが良くても、結局、リアキャリアで“生活感”が出てしまう・・・。
なので、当時の若者は改造の第一歩として、リアキャリアを取っ払ったのです。
若者だけでなく工業デザイナーさんにとっても、リアキャリアは“邪魔”な装備だったのでしょう。
そう思わせるモデルが過去にありました。
デザインをスポイルするリアキャリア
何度も登場!わが愛車でもあった「ヤマハ・トライ」(1985年発売)
ターゲットをヤング層に絞り、実用性よりスタイル重視モデルでした。
リアのトライアングルデザインがアピールポイント。
しかし、リアキャリアを装備するとトライアングルデザインが台無しに!
メーカーとしては、装備しない訳にはいかないらしく、苦肉の策として編み出されたのが、
スラントラック?もはや、キャリアとしては意味をなさない!
もちろん、まともなキャリアを求めるユーザー(ママたち)もいる訳でして、オプションで「水平リアキャリア」が用意されていました。
ママたちの勝利!?
家庭生活の要であるママたちにとって、デザイン云々はどうでもよい(ことが多かった)
重要なのは“使い勝手の良さ”でありスクーターに求めるのは“荷物の積みやすさ”
タクトの樹脂キャリアは、荷物が積みにくかったせいか、1994年(平成6年)7月のマイナーチェンジで「タクト」と「タクト・スタンドアップ」の2タイプで、従来のパイプ式リアキャリアに戻されました。
ママたちが「使いにくい」「リアバスケットが付かない」とクレームをつけたのでしょう(勝手な憶測)
1996年(平成8年)2回目のマイナーチェンジでも、かろうじて「タクト・S」と樹脂キャリアは生き残り、最後の抵抗を見せます。
ママたちの魔の手もここまでは及ばなかったか・・・。
不良ファッションアイテムとしてのスクーター
悪いイメージ(不良)を醸し出すファッションが、ジャンルとして確立していた80年代から90年代にかけて。
その一翼を担ったのが、原付スクーターです。
6代目タクトが登場は、「コギャル」の時代。
車高の上げ下げや、羽(ウイング)を付けたりは別次元として、ノーマルステッカーをはがしたり、リアキャリアを外したりと、マイナスオプション的改造(お金もかからない)でちょい悪感を演出。
不良でなくても、ママ原チャリ(ノーマル)からの脱却を図って手をかけたものです。
しかし、6代目タクトだけは、リアキャリア付の方がカッコいい・・・、例外中の例外でした。
スタイルを大きく変化させながら受け継がれた“不良ファッション”でしたが、現在は存在しないそうです(残念ながら?)
街で見かけるスクーターも、そのほとんどがノーマルです。
もちろん、リアキャリアを外しているスクーターも皆無です。
まれに、やんちゃな2スト・スクーター(車種不明)を見かけると、なぜかホッとする!
先日、スーパーの駐輪場で6代目タクトを見つけました。
ブラックにオールペイントされ元の色は不明ですが、残念ながらリアキャリアはスチールパイプ式。
ヤンキーやデザイナーのこだわりを打ち砕き、ママたちが勝利した証です。
そこまでママに尽くしたタクトでしたが・・・、
この続きは、7代目タクトで。
7代目タクトについては⇒平成の原付バイクー7代目タクト