文房具は常に進化を遂げるため、各世代ごとに“記憶に残る文具”が何かあるものです。
シャーペンが一般に普及した1970-80年代には、今でも根強い人気を維持する文具(特に筆記具)が数多く誕生しました。
その一つが、単純?な構造でありながら近未来を感じさせる複合筆記具「ダブルアクション」でした。
ライバルは「シャーボ」?
1977年(昭和52年)のシャーボ(ゼブラ)の誕生は、今でもはっきり記憶に残っています。
「右に回すとシャープペンシル、左に回すとボールペン。1本で2本分」のあれです!
(シャーボについては、また別の機会に)
金持ちのT君が学校に持ってきたものを皆でいじくりまわし、その高級感と高機能に驚きました。
その値段は、当時の価格で3,000円!お小遣い10か月分(自分の場合)にも驚いた・・・。
普通の子供には手が届かなかった(必要もない?)複合筆記具でしたが、学生が手にできるもっとカジュアルなデザイン、かつリーズナブルな価格で誕生したのが・・・、
1978年(昭和53年)にプラチナ万年筆が発売した、
初期型ダブルアクションだったのです。
(上がゼブラのシャーボ、下がプラチナのダブルアクション)
価格は500円(当時)で決して安いとは言えませんでしたが、シャーボに比べると1/6ですし、何よりかっこよかった。
シャーボが1+1=2をいかに1に見えるかにこだわり苦労したものを、あっさり1+1=2ですと割り切ったダブルアクション。
シャーペンとボールペンを横並びにしてくっ付けただけ?
でも、このあからさまな“合体”が子供にはたまらなかった。
合体の結果、見た目はカッターナイフのようなデザインになりました。
(シャーペンは、ダブルノック機構)
ちなみにですが、カッターナイフにもダブルアクション的な発想で誕生したものがあります。
オルファの「カッターのこ」という製品で、こちらは裏表で合体、両面構造になりました。
一方にカッター刃、反対側にのこぎり刃がセットされています。
現在、行方不明。見つけ次第画像を上げます。
(すでに生産終了しているようです)
こちらは実用性が重視され、シンプルなデザインとなりましたが・・・。
実際に使ってみると、多少“帯に短し襷に長し”感がありました。
カッター、のこぎり共に取り扱いには危険が伴うため、別々に使い分けたほうが作業性が良いと感じました。
ダブルアクションの使い勝手はどうだったのでしょうか?
携帯に便利な薄型でハードなデザイン
“プラチナ万年筆の歩み”の中で初期型ダブルアクションを紹介しているくだりです。
確かに大人になって手にしてみると、やや小ぶりでポケットに挿してもかさばらないといった感じです。
一般的な筆記具と違い断面がオーバル型ですが、書きにくいと感じることはありません。
ただし、リリース機構やノックなどのボタン類が小さいため、操作性は良いとは言えません。
が、40年経った今でも、見て楽しい使って楽しい1本であることは間違いなしです。
残念ながら、初期型ダブルアクションは現在作られていませんが、ダブルアクションの名称やロゴは今でも引き継がれ複合筆記具として販売されています。
林業とNHKとプラチナ万年筆
ダブルアクションとは全く関係のない話になりますが・・・、
以前、NHKラジオの番組で使用する効果音(SE)を収録させてほしいという依頼がありました。
その効果音というのが、
「カーン、カーン」と山中に響き渡るクサビを打ち込む音です。
一般的には、斧の音と捉えられるかもしれませんが、それは昔のお話。
今はチェンソーで木を伐り倒しますが、その際に使用するのがクサビです。
確か「神去なあなあ日常」のラジオ小説で使用するとのことでした。
その辺の木を叩いて音を撮ればと思われるかもしれませんが、そこはNHKのこだわり?
実際、聞く人が聞けばその違いは一目(聞)瞭然!クサビを打ち込む音には独特の響きがあります。
前もって依頼を聞いていたので、国道に近い現場にそれなりの太さ(直径35cmぐらい)のスギを残しておきました。
クサビやチェンソーの音は取れたのですが、そのあとそのスギがかかり木になってしまい、恥をかいた苦い記憶も・・・。
協力したお礼にといただいたのが、
ちょっと高級なボールペン。NHKのロゴ入り。
リフィルには“PLATINUM”とありました。
しかし、自分の手になじむのは・・・、初期型ダブルアクションの方みたいです。