たかがチェンソーと侮ることなかれ①-ソーチェーン

チェンソーorチェーンソー?
林業では、チェンソーが一般的。
でも、回転する刃のことを“ソーチェン”とは言わない・・・、
“ソーチェーン”です。
一般の方からすると、チェンソーは“最強の切断工具”と思われるかもしれませんが、意外とデリケートな工具でもあるのです。
“火花を散らしながらドアをぶった切る”は、映画の中だけのお話。
(ダイヤモンド製の特殊ソーチェーンもあるにはある)
今回は、チェンソーの基本「ソーチェーン」のお話です。

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ちょっとでも火花が飛んだらアウト


溶接の火花か!と思うほどチェンソーから放たれる大量の火花。
演出とは言え、「ソーチェーンがもったいない」とついつい思ってしまう。
(目安として一般的な14~16インチで4千円前後)

実物は、わずかな火花でも飛ばそうものなら、即、目立てのやり直しです。
火花の原因は、回転するソーチェーンが石や砂に触れることによるものです。
立木の後ろに隠れた岩などに気づかずに、まともに当てようものなら目立てに相当な時間がかかります。
(再起不能の場合も)
なので、常に目立て道具一式と予備チェーンを携帯します。

(上から、平ヤスリ、丸ヤスリとハンドル、自作ヤスリケース)

チェンソーを上手に使いこなすには必ず正確な目立てをマスターしなければなりません。
この目立てという作業、豪快なチェンソーのイメージとは異なりとても“地味”でして・・・、

ソーチェーンの目立て


丸ヤスリを使用して、チェーンに取り付けられたカッター(刃)を一個一個、地味に研ぎます。

林業では一般的な16インチガイドバー(40㎝)の場合、
カッターの小さい25AP規格のソーチェーンで42個、
少しカッターが大きい95VPX規格で33個、
左右、互い違いに付いたカッターを研いでいきます。

カッターの大きさにより、使用する丸ヤスリの太さも変わります。
丸ヤスリで研ぐわけですから、カッターは徐々に小さくなっていきます。
最後には薄い三日月のようになって寿命を迎えることになりますが、実際にはチェーンの摩耗による破断の方が先に来ます。
カッターが小さくなると、カッターとカッターの間にあるデプスを下げます。

(カッターとカッターの間にあるサメの背びれのようなものがデプス)
デプスとは、カッターの刃が木に食い込み過ぎないよう当たりを調整するためのもの。
デプスの方が高くなると、カッターの刃がかからなくなるのでデプスゲージで高さを測りながら平ヤスリで削ります。


デプスを下げ過ぎると、刃がかかりすぎて振動が発生するだけでなく、ソーチェーンやチェンソー本体にダメージを与えることになります。

ソーチェーンの目立て作業は、
丸ヤスリでカッターを研ぎ、
必要に応じて、平ヤスリでデプスを下げる、からなるという訳です。

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実際の目立て作業は、コンマ何ミリの細かな作業でマスターするには多少時間がかかりますが(詳しい説明は省きます)初心者用に補助工具が用意されていますのでご安心を!

特に右側の2本、目立てガイドはお勧め。既存のヤスリに装着して使用します。

初心者でも、ガイドを使用すれば最低限(伐れる状態)の目立ては行えます。
ただし、ベストな伐れ味はガイドでは出せません。
機械で研いだ新品のソーチェーンよりも、数回目立てしたチェーンの方がよく伐れるのと同じです。
カッターに対して、正しく正確なヤスリの当て方を指先の感覚で覚えるしかありません。

現場では水平に伐った切り株などを利用し、安定した場所で目立て作業します。
ただし、急峻な地形でも目立てを行えるように皆それぞれ工夫しています。

(邪道ではありますが、チェンソーを抱え込むようなスタイルで研ぐ場合も)

目立てに欠かせないヤスリですが、決して安いものではありません(丸ヤスリ約400円/本)
が、目立ての良し悪しは
“ヤスリの良し悪しにかかっている”といっても過言ではないのです。
チェーン1本に対してヤスリ1本ないし2本ぐらい、ヤスリをけちると体力と燃料を消耗することに!

ソーチェーンの脱線


ついでにソーチェーンの脱線の話を!(話の脱線はここの専売特許)
この脱線も、ソーチェーンの寿命を縮める要因の一つになります。
脱線の仕方によっては、ドライブリンクという足の部分に大きなダメージを受けます。

(リベットより下側に4つ並ぶのがドライブリンク)

チェンソーで映画のようにチャンバラをすると、カッターがボロボロになるだけでなく、ガイドバーからドライブリンクが外れ、チェーンが脱線します。
その時点で、戦闘不能になります(>_<)
実は、ソーチェーンの脱線は日常茶飯事
脱線に備えて、専用プラグレンチは常に携帯。

脱線を防ぐには、こまめな張り具合の調節、瞬間的にガイドバーの角度を傾ける、タイミングに合わせてエンジンの回転を下げるなど、ちょっとした工夫が必要なのです。
そういう意味でも、意外とデリケートな工具なのです。
相手が相手(重い樹木)だけに、当然と言えば当然なのですが・・・。

危険、取り扱い注意


最強の切断工具でありながら、その扱いには繊細さが必要。
チェンソーによる事故が多い原因の一つではないでしょうか。
林業でも、チェンソーの扱いに慣れたころが危ないと言われます。
自分も、恥ずかしながら林業を始めて10ヵ月目に、左足・親指の先を切創しました(>_<)
以前、左足の甲をザックリ切りながら「平気です」と言い張った新人の話をしましたが、実は自分も同じ。

⇒怪我と弁当は自分持ち

昼食前の最後の一本でケガをしたのに、平気な顔をして弁当を食べてました。
実際、そんなに痛くはないのです!(アドレナリンのせい?)
傷口は1,5センチほどでしたが、チェンソーによる傷は・・・、無残です。
班長に「やっぱり、病院に行ってきます」と報告すると、一緒に付き添ってくれました。
医者は「骨もちょっと削れてるね」と。
本当の痛みに襲われるのはこの後、傷口の洗浄です。
山に戻れたのは1ヵ月半ほど後でした(復帰まで、菌床しいたけ部門でひたすら薪割り機の操作)

現在、林業ではいち早く切創防護衣着用が義務化され、ソーチェーンとの接触を前提とした安全対策が図られています。
林さんがいつも履いているブルーのズボンも、切創防護衣です。

新たな登場人物“すぎやまさん”が履いているのも切創防護衣、こちらはチャップス・タイプです。

チェンソー防護衣は、内側の特殊な繊維がソーチェーンに絡みつき瞬間的に強制停止させる仕組みです。
優れモノですが、夏場は・・・、正直つらい(暑い!)

ソーチェーンについては、まだまだいろいろとお話しできることがありますが、
これ以上「だから何?」と言う話題を続けても何ですので・・・、この辺で。
次回の「たかがチェンソー」は、ガイドバーを予定しています。

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