鉄道は機関車が客車を押したり引いたりしながら安全運行。
林業は桧山さんたちがかかり木を押したり引いたりしながら安全処理。
鉄道と林業の“押し/引き”を無理やり結び付けた、こじつけ話です・・・。
推進運転(押し)
日本では珍しい推進運転。
機関車(動力車)が客車を後ろから押して進む運転方式。
(たいていは先頭の機関車が客車を「引く」牽引運転)
大井川鉄道・井川線がこの方式で運行しています。
運転手さんは先頭の車両(制御車)で運転していますが、列車を動かしているのは最後尾のディーゼル機関車です。
先頭の制御車。
最後尾のディーゼル機関車。
途中の急こう配区間では、アプト式電気機関車もそのまた後ろから押してくれます。
推進運転を採用する理由はいろいろあるそうですが、井川線の場合は主に安全のため。
上り勾配がきついだけでなく、カーブがきつい(Rが小さい)ため、連結器に大きな負担がかかるそう。
もし「引き」の牽引運転中の上り急こう配で連結器が壊れたら(>_<)
なので、万が一に備えて、頼りになる機関車が後ろから「押し」てくれるという訳です。
連結器の負担も軽減できるとなれば一石二鳥!(^^)!
推進運転をよく知って井川線に乗ると、より安心、より楽しい!
過去記事:ココだけの魅力―大井川鐵道、南アルプスあぷとライン
かかり木を「押す」
伐倒木が隣接木にかかってしまうかかり木。
桧山さんのような新人さんは、経験不足からかかり木を発生させやすい(>_<)
かかり木に対するアプローチを間違えると、大変危険(死亡事故も多発)
かかり木の安全処理も「押し!」(今回、木回しは省略)
倒れる方向と反対側&元口に近い安全な立ち位置からかかり木にアプローチできるので。
押してかかり木が外れたら処理完了!
外れなくても、押す(揺らす)ことにより、かかり木の状態を把握できます。
探りの意味合いが強い「押し・揺らし」
時々、かかり木になると慌ててチェンソーを使った処理(たいていはかかり木禁止事項)に移行する人がいますが、これは危険!
予期せずかかり木が外れたり、かかり木に加わっている力を見誤って事態はより深刻に。
残念ながら、安全な「押し」にはかかり木処理に有効な道具がない(>_<)
「引き」にはロープやロープウインチ、チルホールなど牽引具があるのに・・・。
押し道具で思いつくのは、ハスクバーナの講習会で一度だけ見た「スライドジャッキ」ぐらい。
記憶が曖昧ですが、長さが2m近くあり(しかも重い)ハンドルを回すと伸縮ポールが伸びる仕掛け。
一方を立木や切り株の根元にセット、もう一方をかかり木の背側にセットしてハンドルを回す!
残念ながら実演ではかかり木は外れませんでした(あまり有効な道具とは・・・)
道具がないなら、周辺にあるものを利用してかかり木を「押せ」ないものか?
昔の人(どの時代かは分からないが)が考え出したのが・・・、
「あびせ倒し」&「かかられた木の伐倒」
桧山さんたちのように林業を生業とする人は、伐木に関する特別教育で「あびせ倒し」と「かかられた木の伐倒」はかかり木処理禁止事項として教え込まれます。
「押し」は押しでも、これは危険な押し。
(FW研修テキストより)
一見すると「なるほど!」と感心しそうな処理方法。
「上手く押せる」と思えてしまうのが落とし穴。
しかし、実際にやってみると(やらないでくださいね)何が危険なのか分かります。
失敗して初めて分かる危険因子もあります(時すでに遅しでなければよいが)
ベテランの森さん曰く、
「間違ったかかり木処理は、ロシアンルーレットみたいなもの」
毎回弾が飛び出せば、だれもやろうとは思わない・・・。
しかし、たまにしか弾が出ないと分かれば「今回は大丈夫」と大勝負。
そのうち弾が込められていることも忘れ・・・、
「ズドン!」
30回目か300回目、3000回目か・・・、もしかすると次回かも(>_<)
(かかり木禁止事項については後の「かかり木処理シリーズ」で扱いたいと思います)
恋のごとく「押してダメなら引いてみろ」
相手の気(木)が変わるかもしれませんからね~。
次回は「引き」です。