林業の安全性の向上やイメージアップに貢献したフォレストワーカー・ユニフォーム(前回のお話)
しかし、派手さや見た目の良さだけでは・・・、
チェンソーによる切創事故は防げない(>_<)
そこで登場するのが、チェンソー防護ズボン。
林業では、2015年10月から防護ズボン着用が義務化されました。
これでFWワーカー桧山さんの脚も安心!かと思いきや・・・、
防護ズボンはいざという時の備え
防護ズボンはチェンソーが接触しても大丈夫と聞くと、
こんな感じをイメージしますが実際は、
見た目はただのズボンです!(^^)!
秘密はズボンの内部(生地裏側)にある「防護繊維層」
ソーチェーンがこの繊維防護層に達すると、防護繊維が瞬間的に絡みついて強制停止する仕組み。
チェンソーは構造上、刃が体に接触した瞬間引っかけて回り込むため、ソーチェンの走行を一瞬で止める必要があるのです。
トップスピードでまともに接触した場合、防護ズボンはボロボロ、チェンソーにもダメージが。
(繊維が深く絡みついたスプロケットノーズバーは使用不能になる可能性あり)
桧山さんの脚を守るため、ズボンが身代わりになってくれるのです。
なので、防護ズボンをはいたからと言って油断してはいけません。
あくまで「いざという時の備え」であって、防護ズボンを当てにした作業はかえって危険です。
防護ズボンにも弱点あり
林業で防護ズボン導入が遅れた最大の理由は・・・、
着用すると暑い!
防護繊維層はごっついキルティング生地みたいなもので、高温多湿の日本の夏には不向きです(熱中症の危険度が高まります)
快適性を考えると、冬でも着用できるのは気温5度を下回るあたりから。
過去には、日本の気候を考慮して北欧仕様より防護繊維層を薄くしたジャパンモデルもありました。
(北欧に比べチェンソーが小型ゆえ可能だったと聞きました)
それでも夏場の着用は「無理!」
また、防御繊維層を危険度の高い前面(一部側面)に絞ることにより暑さを軽減。
しかし、とっさに逃げようと回転刃をかわしたところ、ふくらはぎを切創してしまったというケースも(反射神経のよさが仇に)
防護ズボンは、切創事故防止と熱中症対策の両立が難しいのです(>_<)
しかし、2010年までには日本独自の防護ズボンも登場し、夏場に対応したモデルもラインナップされるように。
(生地を薄くしたり、ベンチレータを設けて通気性を改良)
自分の職場では、経営側と相談し2011年に導入(支給)・義務化しました。
現場の反発も予想されましたが、タイミングを逃さぬよう準備していたこともあり定着するまでに時間はかかりませんでした。
もう一つの弱点は、繊維が劣化すると防護機能が低下すること。
(「緑の雇用」事業 災害事例 発行:全森連 より)
昔に比べると丈夫で扱いやすくなったとはいえ、やはり消耗品!
定期的に更新しないといけません(自腹だとキツイ)
安全教育・活動との両輪で
防護衣の義務化で、よりおしゃれなイメージとなった林業。
しかし、安全(意識)は防護衣を着ただけで身につくほど甘くない!
自分の職場では、安全装備義務化と同時に事務方も巻き込んだ安全活動(安全パトロール・KYT活動など)も導入。
タイミングは、2日連続でチェンソーによる切創事故が起きたことでした。
桧山さんのような新人FWがケガをしたため、その日のうちに安全会議を開いて注意喚起!
しかしその翌日、今度は森さん林さんクラスのベテランが同じケガを負って戦線離脱。
さすがに統括現場管理者だった自分は参事に呼び出され(前日もですが)
「一体現場はどうなってる」と。
「すいません、ちょっと時間をください」
後日、それまで温めていた安全装備の義務化(支給)と毎日の毎月の安全活動を同時実施することを提案。
「ピンチをチャンスに」みたいな(ケガをした二人には申し訳ないのですが)
結果として、それまでの連続ゼロ災害記録が最高100日ちょっとから、360日まで記録更新!(指爪の剥がれでストップ)
しかし、防護衣と同じで安全活動も定着した時点から劣化(形骸化)が始まります。
活動内容の見直しや更新が必要です。
次回は「チャップス」です。